虚血性腸炎
虚血性腸炎
虚血性腸炎とは、大腸への血流が一時的に不足することで、大腸の粘膜(内側の壁)に炎症やただれが生じる病気です。「虚血(きょけつ)」とは、血液の流れが滞り、臓器や組織が酸素不足になることを指します。心臓でいえば狭心症や心筋梗塞、脳でいえば脳梗塞に似たメカニズムが、大腸で起こるイメージです。虚血性腸炎は、中高年以降の女性に多い傾向があるとされております。突然の左下腹部の痛みと血便がセットで起こるのが特徴で、「急にお腹が痛くなって、すぐに血便が出た」という形で発症することがほとんどです。
多くの場合は一時的な血流の低下が原因であり、適切な治療と安静によって数日〜1週間程度で回復することが多いとされています。ただし、重症化すると腸が壊死(えし:組織が死んでしまうこと)したり、腸に穴が開いたりすることもあるため、症状が現れたら早めに医療機関を受診することが大切です。
虚血性腸炎の症状は比較的特徴的で、以下の3つがほぼ同時に起こることが多いです。
突然の腹痛
左下腹から側腹部(おへその左下やわきばらあたり)に、突然ズキズキとした強い痛みが起こります。「今まで経験したことがないような痛み」と感じる方も多く、急に症状が出るのが特徴です。
血便
腹痛とほぼ同時か、腹痛の直後に血便が出ます。鮮やかな赤い血や暗赤色の血が便に混じることが多く、血液だけが出ることもあります。
下痢
血便とともに、水っぽい便や軟便が出ることがあります。
そのほか、以下のような症状が現れることもあります。
「突然お腹が痛くなって、すぐ血便が出た」という場合は、虚血性腸炎の可能性が高いため、速やかに医療機関を受診してください。血便は「痔(じ)だろう」と自己判断されがちですが、虚血性腸炎をはじめ、大腸がんや炎症性腸疾患など、早期対応が必要な病気のサインであることもあります。
虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に低下することで起こりますが、その背景にはさまざまな原因・リスク要因があります。
便秘によって腸の中に硬い便がたまると、腸が強い力で収縮して便を押し出そうとします。この際に腸の血管が圧迫されて血流が低下し、虚血性腸炎を引き起こすことがあります。虚血性腸炎の患者さんに便秘持ちの方が多い傾向があるとされており、便秘の改善が予防においても重要です。
年齢を重ねると血管が硬くなり(動脈硬化)、血液が流れにくくなります。大腸に栄養を届ける血管が動脈硬化を起こしていると、血流が低下しやすくなり、虚血性腸炎のリスクが高まります。高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)をお持ちの方は特に注意が必要です。
体の水分が不足して脱水状態になると、血液の量が減って血圧が低下し、腸への血流が不足しやすくなります。激しい運動後・下痢・嘔吐・入浴後などに発症することもあります。
虚血性腸炎の診断において、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)は最も重要な検査です。大腸の内部を直接観察することで、以下のことを確認することができます。
虚血性腸炎は、大腸カメラ検査を行うことで比較的特徴的な所見(縦走する潰瘍や発赤など)が確認できることが多く、診断の確定に非常に役立ちます。また、組織の一部を採取(生検)して顕微鏡で調べることで、他の疾患との鑑別診断(病気を見分けること)をより正確に行うことができます。「突然の腹痛と血便」は緊急性がある症状のひとつです。症状が現れたら自己判断せず、早めに受診して大腸カメラ検査を含む適切な検査を受けることが大切です。検査に対して不安をお持ちの方も、鎮静剤(うとうとするお薬)を使用することで苦痛を和らげながら受けていただくことができます。
虚血性腸炎の診断は、症状の特徴と複数の検査を組み合わせて総合的に行われます。
問診
いつ・どのような痛みが起きたか、血便の色や量、便秘の有無、持病(高血圧・糖尿病など)や内服薬の確認をします。症状の経過が診断の大きな手がかりになります。
血液検査
炎症の程度を示すCRP(炎症反応)や白血球数、貧血の有無、腎機能などを確認します。重症度の把握にも役立ちます。
大腸カメラ検査
(大腸内視鏡検査)
大腸の内部を直接観察し、炎症・潰瘍・出血部位の確認と、他の疾患との鑑別を行います。虚血性腸炎の確定診断において最も重要な検査です。
CT検査
お腹全体を断面画像で確認する検査です。腸壁の肥厚(腸の壁が厚くなっている状態)や腸の周囲の炎症、他の臓器の異常を調べます。大腸カメラ検査の前に行われることもあります。
腹部超音波検査
(エコー検査)
お腹に超音波を当てて腸の状態を確認します。体への負担が少なく、素早く行える検査です。
便検査
細菌性腸炎など、感染が原因の血便でないかを確認するために行われることがあります。
虚血性腸炎の治療は、症状の重さによって異なります。多くの場合は保存的治療(手術をしない治療)で回復が期待できます。
絶食・腸の安静
発症初期は腸をしっかり休ませるために、食事をしばらく控えます。腸への刺激を減らすことで、粘膜の回復を促します。
点滴による水分・
栄養補給
食事ができない間は、点滴で水分・電解質・栄養を補います。脱水を防ぎ、体の回復をサポートします。
抗菌薬
腸の炎症に対して、細菌の二次感染を防ぐ目的で抗菌薬が使用されることがあります。
便秘の治療
便秘が原因や悪化要因となっている場合は、便を柔らかくする薬や整腸剤を使って腸への負担を減らします。
多くの場合、数日〜1週間程度の入院治療で症状が改善し、回復後は食事を少しずつ再開していきます。
腸が壊死している(血流が完全に途絶えて腸の組織が死んでいる)場合や、腸に穴が開いた(穿孔)場合には、緊急の外科手術が必要になることがあります。ただし、このような重症のケースは比較的まれです。
虚血性腸炎は、適切な治療によって多くの場合に回復しますが、再発することもあります。再発を防ぐためには、生活習慣の見直しが大切です。
喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させます。禁煙することで血管の状態を改善し、再発リスクを下げることが期待できます。
虚血性腸炎の既往がある方は、腸の状態を定期的に確認するために大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。再発の早期発見はもちろん、大腸がんなど他の疾患の予防・早期発見にもつながります。
以下に当てはまる方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
「血便が出たけど、痔かもしれないから様子を見よう」と思って放置してしまう方も少なくありません。しかし、血便は大腸のさまざまな病気のサインである可能性があります。早めに受診して正確な診断を受けることが、重症化の予防や安心につながります。当院では、患者さんが安心して検査・治療を受けていただけるよう、丁寧な説明と体への負担が少ない対応を心がけております。気になる症状がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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