胃炎
胃炎
胃炎とは、胃の粘膜に炎症が生じた状態の総称です。発症のしかたによって「急性胃炎」と「慢性胃炎」の2種類に大別されます。急性胃炎は、過度の飲酒・暴飲暴食・薬剤・強いストレスなどをきっかけに胃の粘膜が急激に炎症を起こした状態です。突然の腹痛・吐き気・嘔吐などの症状があらわれますが、多くの場合は原因を取り除くことで数日以内に改善が期待できます。
一方、慢性胃炎は胃の粘膜に長期にわたって炎症が続き、粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」へと進行していく状態です。慢性胃炎の最大の原因はヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)の感染とされており、日本人の中高年を中心に多くの方が感染していると言われています。慢性胃炎は自覚症状が乏しいことも多く、知らぬ間に進行しているケースが少なくありません。
胃炎そのものは比較的よくある疾患ですが、慢性胃炎・萎縮性胃炎が進行すると胃潰瘍や胃がんへのリスクが高まるとされています。「胃が弱い」「胃の調子が悪い日が続いている」という方は、一度胃カメラ検査で正確な状態を確認されることをおすすめします。
胃炎の症状は、急性か慢性かによって異なります。
急性胃炎では症状が急激に現れるのが特徴です。
慢性胃炎は無症状のことも多く、症状が出ていても軽微なため見逃されやすいです。
慢性胃炎では「何となく胃の調子が優れない日が多い」「市販の胃薬を飲み続けている」という状態が続くことがあります。症状の程度が軽くても、長期間にわたって続く場合は放置せずに受診されることをおすすめします。
胃炎の原因はさまざまですが、急性・慢性それぞれで主な原因が異なります。
慢性胃炎・萎縮性胃炎の原因の大部分はピロリ菌感染によるものとされています。ピロリ菌は胃の強酸性環境の中で生き続け、長期にわたって粘膜を傷つけ続けます。感染は主に幼少期に汚染された水や食物を介して起こるとされており、成人後に感染するケースは少ないとされています。ピロリ菌に感染していても自覚症状がない方が多いため、感染に気づかずに過ごしているケースが多いのが現状です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソプロフェン・アスピリンなど)や抗血栓薬の服用は、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの産生を抑制することで粘膜を傷つけ、急性・慢性胃炎や潰瘍を引き起こすことがあります。痛み止めを長期服用している方は特に注意が必要です。
大量のアルコール摂取や過食は胃粘膜に直接ダメージを与え、急性胃炎の原因となります。
強い精神的・身体的ストレスが自律神経を乱し、胃酸分泌過多や胃の血流低下を招いて粘膜が傷つくことがあります(ストレス性胃炎)。
自己免疫異常によって自身の胃壁細胞が攻撃される比較的まれな胃炎です。ビタミンB12の吸収障害を引き起こし、悪性貧血の原因になることがあります。
胃炎の診断において、胃カメラ検査は非常に重要な役割を担っています。症状だけでは胃炎の種類・程度・ピロリ菌感染の有無を判断することができず、また胃炎と似た症状をきたす胃潰瘍・胃がんなどの重大な疾患を見逃すリスクがあるためです。
胃カメラ検査では胃の粘膜を直接観察し、以下のような情報を得ることができます。
特に萎縮性胃炎の進行度は胃がんリスクと関連しているとされており、萎縮が広範囲に及ぶほどリスクが高まると言われています。胃カメラ検査を定期的に受けることで、変化を継続的に把握することができます。「胃カメラ検査は苦しそう」と敬遠される方も多いですが、経鼻内視鏡(鼻から挿入するカメラ)や無理には進めませんがお鼻の痛みを伴うことがありますので、経口から径が細く精度も高いカメラを使用し、鎮静剤を併用することにより苦痛の軽減に努めています。胃の不調が続く方は、まず一度胃カメラ検査を受けられることをおすすめします。
胃炎の診断には、以下の検査を組み合わせて行います。
胃カメラ検査・生検
胃の粘膜を直接観察する最も確実な方法です。炎症・萎縮の状態を評価するとともに、必要に応じて組織を採取(生検)し、ピロリ菌感染の有無・がん細胞の有無を確認します。
ヘリコバクター・
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の感染を調べる方法には、胃カメラ検査を用いる方法(迅速ウレアーゼ試験・培養検査・病理組織検査)と、胃カメラ検査を使わない方法(尿素呼気試験・便中抗原検査・血中抗体検査)があります。症状や状況に応じて適切な検査を選択します。
血液検査
炎症反応・貧血・ピロリ菌抗体・血清ペプシノゲン(萎縮性胃炎の程度を間接的に評価する指標)などを調べます。
腹部超音波検査
胃炎に似た症状をきたす胆石症・膵臓疾患などを除外するために行うことがあります。
胃炎の治療は、原因と症状のタイプに応じて行います。
慢性胃炎でピロリ菌が陽性の場合は、除菌療法が強くおすすめされます。2種類の抗菌薬と胃酸を抑えるお薬(P-CABもしくはPPI)を1週間服用する「1次除菌」を行い、除菌が成功しなかった場合は抗菌薬の種類を変えた「2次除菌」を行います。除菌成功後は胃炎・潰瘍の改善が期待されるとともに、胃がんリスクの低減にもつながるとされています。
胃酸の過剰分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)・H2ブロッカーや、粘膜を保護する薬(レバミピドなど)を使用します。急性胃炎の症状改善や慢性胃炎の症状緩和に有効とされています。
NSAIDsや抗血栓薬による薬剤性胃炎の場合は、原因薬剤の中止や変更を主治医が判断し提案します。薬の服用を続ける必要がある場合は、酸分泌抑制剤や胃粘膜保護薬の併用が行われます。
暴飲暴食・過度の飲酒・喫煙・強いストレスを避け、規則正しい食事と睡眠を心がけることが胃炎の改善と再発予防に重要です。
胃炎、特に慢性胃炎・萎縮性胃炎を放置し続けると、以下のような疾患へと進展するリスクが高まります。
胃潰瘍・
十二指腸潰瘍
慢性的な炎症によって胃や十二指腸の粘膜の防御機能が低下し、潰瘍(粘膜の深い層まで欠損した状態)が生じることがあります。強いみぞおちの痛み・出血(黒色便・吐血)が起こる場合があります。
胃がん
萎縮性胃炎が進行すると、腸上皮化生(胃の粘膜が腸の組織に置き換わる変化)が生じ、胃がんの発生リスクが高まるとされています。ピロリ菌感染を長年放置することも胃がんの重大なリスク因子とされており、除菌とあわせた定期的な胃カメラ検査による経過観察が非常に重要です。
貧血(出血性・
ビタミンB12欠乏性)
胃炎による慢性的な出血が貧血を引き起こすことがあります。また、自己免疫性胃炎ではビタミンB12の吸収が障害され、悪性貧血を生じることがあります。
症状が軽くても、胃炎が長期にわたって続いている場合や、ピロリ菌感染が確認されている場合は、放置せずに適切な治療と定期的な経過観察を続けることが大切です。
以下に当てはまる症状や状況がある方は、お気軽にご相談ください。
胃炎は適切な診断と治療によって改善が期待できる疾患です。「胃が弱いのは体質だから仕方ない」とあきらめず、まずは一度ご相談ください。
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