胃ポリープ
胃ポリープ
胃ポリープとは、胃の粘膜の一部が盛り上がって胃の内腔側に突出した状態の総称です。「ポリープ」という言葉はギリシャ語で「多くの足を持つもの」を意味し、粘膜が隆起してキノコ状や半球状に膨らんだものを指します。胃ポリープそのものは良性のものがほとんどであり、多くは無症状で、健康診断のバリウム検査や胃カメラ検査で偶然発見されます。ただし、ポリープの種類によっては悪性化(がん化)のリスクがあるものも存在するため、発見された際には種類・大きさ・形状を正確に把握し、適切な対処を行うことが重要です。
日本では胃カメラ検査が広く普及していることもあり、胃ポリープが発見される機会が増えています。「胃にポリープがある」と言われると不安を感じる方も多いですが、種類によっては経過観察のみでよいものも多くあります。一方で放置してはいけないタイプも存在するため、専門医による正確な診断を受けることが大切です。また、ピロリ菌感染との関連が深いポリープもあり、感染の有無を調べることが診断や治療方針の決定に役立ちます。
胃ポリープは、ほとんどの場合で自覚症状がありません。小さなポリープであれば胃の機能に影響を与えることは少なく、検査で偶然見つかるケースがほとんどです。そのため「症状がないから胃は大丈夫」と思っていても、知らないうちにポリープが存在していることがあります。ポリープが大きくなると、以下のような症状が現れることがあります。
ただし、これらの症状は胃ポリープに特有のものではなく、胃炎・胃潰瘍・胃がんなど他の疾患でも同様の症状が現れます。「症状がないから大丈夫」とは言い切れないため、症状の有無にかかわらず定期的な胃カメラ検査を受けることが大切です。
胃ポリープにはいくつかの種類があり、それぞれ性質・がん化リスク・対処法が異なります。代表的なものを紹介します。
過形成性ポリープ
胃ポリープの中で比較的多くみられるタイプです。胃の粘膜が慢性的な炎症(ヘリコバクター・ピロリ菌感染や萎縮性胃炎)によって刺激を受け、増殖した状態です。多くは良性ですが、大きなもの(2cm以上)や形状が変化しているものではがん化のリスクがあるとされており、経過観察または切除が必要です。ピロリ菌除菌後に縮小・消失することもあります。
胃底腺ポリープ
胃の上部(胃底部・体部)の胃底腺から発生するポリープで、プロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)を長期服用している方や、ピロリ菌未感染の方に多くみられます。通常は複数発生し、大きさは数mmと小さいことが多いです。がん化リスクは非常に低いとされており、多くは経過観察のみで対応します。胃酸を抑えるお薬の影響で大きくなったり個数が増えることがあります。逆流性食道炎などで治療継続が必要な場合を除き漫然と胃薬を続けるのではなく、個々の状態に応じた治療や経過観察を提案いたします。悪性化が少ないといわれていた胃底腺ポリープも胃底腺型胃がんといってがんに特徴的なポリープの形態が知られるようになってきました。
腺腫性ポリープ
(胃腺腫)
胃の腺上皮から発生するポリープで、がんの前段階(前がん病変)として位置づけられています。大きさ・形状・組織の異型度によってがん化リスクが異なり、一定の大きさ以上のものや高度異型のものは切除の対象となります。定期的な胃カメラ検査による監視が必要なポリープです。
胃がん
(悪性ポリープ)
胃の粘膜から発生した早期胃がんが、隆起した形(ポリープ状)をとることがあります。見た目だけでは良性ポリープとの区別が難しい場合もあるため、胃カメラ検査での観察に加えて、必要に応じて組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査(生検)を行うことが重要です。
その他
胃粘膜下腫瘍(消化管間質腫瘍GISTなど)・迷入膵(副膵)・カルチノイドなど、粘膜の下から発生した隆起性病変もポリープとして気づかれることがあります。これらは表面の粘膜が正常に保たれているため、生検だけでは診断が難しく、超音波内視鏡検査などが必要になることもあります。
胃カメラ検査は、胃ポリープの診断・評価・経過観察において中心的な役割を果たします。胃カメラ検査では、ポリープの位置・数・大きさ・形状・色調・表面の性状を詳しく観察します。通常の白色光観察に加えて、NBI(狭帯域光観察)などの特殊な観察法を組み合わせることで、粘膜の血管パターンや表面の微細構造をより鮮明に描出し、悪性の可能性を評価することができます。疑わしい病変に対しては生検(組織採取)を行い、顕微鏡で細胞・組織を詳しく調べます。生検の結果によって良性・前がん病変・悪性(がん)の区別をつけることができ、その後の治療方針の決定につながります。
経過観察については、ポリープの種類・大きさ・異型の程度によって推奨される受診間隔が異なります。胃底腺ポリープのように経過観察でよいものは1〜2年に1回程度の検査が目安となる場合がありますが、腺腫性ポリープや大きな過形成性ポリープはより短い間隔での観察や切除が推奨されます。「以前に胃ポリープを指摘されたが、その後受診していない」という方は、ぜひ一度現在の状態を確認されることをおすすめします。
胃ポリープの診断には以下の検査が行われます。
胃ポリープの診断において最も重要かつ確実な検査です。直接粘膜を観察してポリープの性状を評価するとともに、必要に応じて組織を採取(生検)し、病理検査で良悪性を確認します。生検は胃カメラ検査中に同時に行えるため、別途処置を受ける必要はありません。
健康診断などで広く行われる検査です。バリウムを飲んで胃の形態をX線で観察します。ポリープの存在を拾い上げるスクリーニングとして有用ですが、ポリープの詳細な性状評価・生検は行えないため、異常を指摘された場合は胃カメラ検査による精密検査が必要です。
過形成性ポリープはピロリ菌感染との関連が深いため、ピロリ菌感染の有無を調べる検査(尿素呼気試験・便中抗原検査・血中抗体検査など)を合わせて行います。
貧血の有無・炎症反応・腫瘍マーカー(CEAなど)を評価します。また健康診断や人間ドックで採用されている、血清ペプシノゲン検査(胃粘膜の萎縮の程度を間接的に調べる検査)を合わせて行うことで、胃がんリスクの評価にも役立ちます。
胃ポリープの治療方針は、種類・大きさ・組織所見・患者さんの状態によって異なります。
経過観察
胃底腺ポリープや小さな過形成性ポリープなど、がん化リスクが低いと判断された場合は、定期的な胃カメラ検査による経過観察が基本となります。ポリープの大きさや形状に変化がないか継続的に確認することが大切です。
内視鏡的切除術
(ポリープ切除)
がん化リスクがある腺腫性ポリープや、大きな過形成性ポリープ・形状変化のあるポリープは、胃カメラ検査を用いた内視鏡的切除術(ポリペクトミー・EMR・ESDなど)の対象となります。開腹手術を行わずに胃カメラ検査の操作のみでポリープを切除できるため、体への負担が少なく、入院期間も比較的短い治療です。切除した組織は病理検査に提出し、がん細胞の有無を確認します。
ピロリ菌の除菌療法
ピロリ菌感染が確認された場合は除菌療法を行います。特に過形成性ポリープはピロリ菌除菌後に縮小・消失する場合があるとされており、除菌療法は治療の重要な選択肢のひとつです。
外科手術
がんへの進展が確認された場合や、内視鏡的切除が困難な大きさ・部位のポリープでは外科的手術が検討されます。
以下に当てはまる症状や状況がある方は、お気軽にご相談ください。
胃ポリープは種類によって対処が大きく異なります。「良性だから安心」と放置せず、定期的な胃カメラ検査で状態を把握し続けることが、胃がんの早期発見・予防にもつながります。気になることがあれば、どうぞお気軽にご来院ください。
TOP