好酸球性食道炎
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎とは、食道の粘膜に「好酸球」と呼ばれる免疫細胞が異常に集まり、慢性的な炎症を引き起こす疾患です。好酸球はもともとアレルギー反応や寄生虫感染に対して働く白血球の一種ですが、健康な状態では食道にはほとんど存在しません。何らかの免疫異常により食道に好酸球が集積することで、飲み込みにくさや胸のつかえ感などの症状が現れます。
好酸球性食道炎は欧米では1990年代から広く認識されるようになり、日本でも近年患者数が増加しているとされています。かつては比較的まれな疾患と考えられていましたが、胃カメラ検査の普及とともに発見される機会が増えています。成人では30〜50代の男性に多くみられる傾向がありますが、小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症することが知られています。
慢性的な炎症が続くと食道の壁が徐々に固くなり(線維化)、食道が狭くなる「食道狭窄」に進展することがあります。症状が軽くても放置せず、適切な診断と治療を受けることが大切な疾患です。
好酸球性食道炎では、食道の慢性的な炎症によって以下のような症状が現れます。
食べ物を飲み込む際に胸のあたりでつかえる感覚や、飲み込みにくさは最も代表的な症状です。特に肉・パン・米など固形物を飲み込む際に強く現れることが多く、水で流し込まないと飲み込めないと感じる方もいらっしゃいます。
逆流性食道炎に似た胸やけや、胸の中央付近の締め付けるような痛みを感じる方もいます。胃酸の逆流を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)を服用しても症状が改善しない場合は、好酸球性食道炎の可能性を考慮する必要があります。
成人と異なり、小児では嘔吐・腹痛・食欲不振・体重増加不良などとして現れることが多く、診断が遅れやすい場合があります。
好酸球性食道炎の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、食物アレルギーや環境アレルゲン(花粉・ハウスダストなど)に対する免疫過剰反応が深く関与していると考えられています。好酸球性食道炎の患者さんの多くに、アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・食物アレルギーなどの他のアレルギー疾患が合併していることが知られています。食物アレルゲンとしては、小麦・牛乳・卵・大豆・ナッツ・シーフードなどが関与しやすいとされています。ただし、特定のアレルゲンが特定できない場合も少なくありません。
遺伝的な素因も関与しているとされており、家族内に同様の疾患やアレルギー疾患を持つ方がいる場合はリスクが高まる可能性があります。また、季節性の花粉症と症状が連動するケース(花粉の多い時期に症状が悪化するなど)も報告されており、吸入アレルゲンが食道の炎症に関与している可能性も示唆されています。食事内容・生活環境・遺伝的素因が複合的に絡み合う疾患と考えられており、個々の患者さんによって背景が異なります。
好酸球性食道炎の診断において、胃カメラ検査と組織検査(生検)の組み合わせは欠かせません。
好酸球性食道炎では、胃カメラ検査で食道に特徴的な変化が確認されることがあります。代表的な所見として以下が挙げられます。
ただし、これらの所見が必ずしもすべてみられるわけではなく、外見上ほぼ正常に見えても組織検査で好酸球性食道炎と診断されるケースもあります。
胃カメラ検査の際に食道の複数箇所から組織を採取し、顕微鏡で好酸球の数を確認します。好酸球性食道炎では、高倍率視野あたり15個以上の好酸球が確認されることが診断の目安のひとつとされています。生検は痛みを伴わず、胃カメラ検査中に同時に行えます。外見所見だけでは診断が難しいことがあるため、嚥下困難や胸のつかえ感が続く方や内視鏡所見で疑わしい変化がある方は組織検査を行うことがあります。
好酸球性食道炎の診断は、症状・胃カメラ検査所見・組織検査の結果を総合して行います。
問診
嚥下困難・食物のつかえ感・胸やけなどの症状の有無と経過、アレルギー疾患(喘息・アトピー性皮膚炎・食物アレルギーなど)の既往、家族歴を確認します。「固いものが飲み込みにくい」「食事中に食べ物が詰まる感覚がある」という訴えは、好酸球性食道炎を疑う重要な手がかりになります。
胃カメラ検査・組織検査
前述のとおり、胃カメラ検査で食道粘膜を直接観察するとともに、複数箇所から組織を採取して病理検査を行います。逆流性食道炎との鑑別のために、胃酸分泌抑制薬を一定期間服用したうえで再検査を行うこともあります。
アレルギー検査
血液検査(特異的IgE抗体検査)や皮膚テストで、食物・環境アレルゲンに対するアレルギー反応を調べることがあります。アレルゲンが特定できた場合、除去食療法の参考になります(血液のアレルギー検査では特定できないこともあります)。
除外診断
好酸球性食道炎と症状が似ている逆流性食道炎・アカラシア(食道の運動障害)・食道がん・好酸球性胃腸炎などとの鑑別が重要です。他の疾患を除外したうえで診断が確定します。
好酸球性食道炎の治療は、炎症を抑えて症状を改善し、食道狭窄への進展を防ぐことを目的として行われます。現時点では完治というよりも、症状を管理しながら長期的に付き合っていく疾患と考えられています。
プロトンポンプ
阻害薬(PPI)
胃酸分泌を抑える薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)が、好酸球性食道炎に対しても一定の効果を示すことがあります。まず第一選択として使用され、約半数の患者さんで症状の改善と組織所見の正常化が期待できるとされています。
局所作用型
ステロイド薬
PPIで効果が不十分な場合は、嚥下型(飲み込み型)のステロイド薬(フルチカゾンやブデソニドなど)が用いられます。食道の粘膜に直接作用することで炎症を抑えます。全身への影響が少ない形で使用できますが、長期使用の場合は医師の管理のもとで継続することが重要です。
除去食療法
アレルゲンとなりやすい食品(小麦・牛乳・卵・大豆など)を食事から除去する治療法です。原因アレルゲンが特定できる場合は有効な方法とされていますが、食生活への制限が大きいため、医師・管理栄養士と相談しながら進めることが大切です。
食道拡張術
食道狭窄が生じて飲み込みにくさが強い場合は、胃カメラ検査を用いた食道拡張術(バルーン拡張術など)が行われることがあります。食道の狭くなった部分を広げることで嚥下機能の改善が期待できますが、炎症のコントロールも並行して行う必要があります。
以下に当てはまる症状や状況がある方は、好酸球性食道炎の可能性がありますので、お気軽にご相談ください。
好酸球性食道炎は適切な診断と治療によって症状のコントロールが期待できる疾患です。「飲み込みにくい気がするけど、年齢のせいかな」「ストレスかな」と放置されている方も、一度胃カメラ検査で食道の状態を確認されることをおすすめします。
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