食道がん
食道がん
食道がんとは、食道(のどと胃をつなぐ約25cmの管状の臓器)の粘膜から発生する悪性腫瘍です。日本では年間約2万人以上が新たに診断されるとされており、男性に多く、女性の約5〜6倍の頻度で発症すると言われています。食道がんには主に2つの種類があります。ひとつは「扁平上皮がん」で、食道の粘膜を覆う扁平上皮という組織から発生し、日本人の食道がんの約90%を占めます。もうひとつは「腺がん」で、食道下部の腺組織から発生し、逆流性食道炎やバレット食道を背景に生じることが多いとされています。欧米では腺がんの割合が高い傾向がありますが、日本では扁平上皮がんが大多数を占めます。
食道がんの特徴のひとつは、早期では自覚症状がほとんどないことです。食道は周囲に伸び縮みする余裕があるため、腫瘍がある程度大きくなるまで飲み込みにくさなどの症状があらわれにくく、症状が出てから受診すると進行がんであるケースも少なくありません。一方で、定期的な胃カメラ検査によって早期に発見できれば、体への負担が少ない内視鏡治療で対応できる可能性があります。早期発見・早期治療が予後を大きく左右する疾患です。
食道がんは早期では無症状のことがほとんどであり、以下のような症状が現れる頃にはある程度進行しているケースも多いです。気になる症状がある場合は、できるだけ早めに受診されることをおすすめします。
食べ物を飲み込む際に胸のあたりでつかえる感覚や、飲み込みにくさは食道がんで最も多くみられる症状です。最初は固いものだけ感じていたのが、次第に柔らかいものでも感じるようになるという経過をたどることがあります。
胸の中央や背中にじわじわとした痛みや違和感を感じることがあります。がんが食道壁の外に広がると周囲の臓器を圧迫し、より強い痛みが生じることもあります。
がんが食道周囲のリンパ節や反回神経に影響すると、声がれや慢性的な咳が現れることがあります。
飲み込みにくさによって食事量が減り、体重が著しく低下することがあります。進行がんでは食欲不振・倦怠感・貧血なども生じます。
早期の食道がんではほぼ無症状であり、食後に胸がしみる感じや、ごくわずかな違和感として気づかれることがある程度です。定期的な胃カメラ検査が早期発見のカギとなります。
食道がんの発症には、生活習慣が大きく関与しています。以下のリスク要因が重なるほど発症リスクが高まるとされています。
飲酒
アルコールは食道がん(扁平上皮がん)の最大のリスク要因のひとつとされています。特に、アルコールを分解する酵素(アルデヒド脱水素酵素)の働きが弱い体質(いわゆる「お酒に弱い体質」)の方が飲酒を続けると、発がんリスクが著しく高まるとされています。顔が赤くなりやすい方は特に注意が必要です。
喫煙
喫煙は食道がんのリスクを大幅に高めることが知られています。飲酒との組み合わせでリスクがさらに高まるとされています。禁煙は食道がん予防において重要な対策のひとつです。
熱い食べ物・飲み物の摂取
熱い食事や飲み物を習慣的に摂取することで、食道粘膜が繰り返し刺激されることが発がんリスクを高めるとされています。
逆流性食道炎・バレット食道
慢性的な胃酸の逆流による食道下部の粘膜変化(バレット食道)は、腺がんのリスクを高めるとされています。
野菜・果物の摂取不足
偏った食生活・ビタミン・食物繊維の不足もリスク要因として挙げられています。
頭頸部がん・胃がんの既往
食道・咽頭・胃など消化管は同様の発がん環境にさらされることが多く、過去にこれらのがんを経験した方は食道がんの同時発症・異時発症のリスクが高いとされています。定期的な胃カメラ検査による管理が特に重要です。
食道がんの早期発見において、胃カメラ検査は非常に重要な役割を果たします。早期食道がんは通常の観察では発見が難しい場合もありますが、NBI(狭帯域光観察)やヨード染色などの特殊な観察法を組み合わせることで、粘膜の微細な変化を高精度に検出することが可能になっています。
NBIによる観察
NBI(Narrow Band Imaging)は特定の波長の光を用いて粘膜の血管パターンや表面構造を強調する観察法です。がんや前がん病変では正常粘膜と異なる特徴的な血管パターンを示すことがあり、早期病変の発見に役立ちます。
ヨード染色
ヨード液を食道に散布する染色法で、正常な食道粘膜は茶褐色に染まりますが、がん細胞や異形成を含む粘膜は染まらずに淡い色(不染帯)としてあらわれます。肉眼では見えにくい早期病変を視覚的に浮かび上がらせる有効な方法です。飲酒習慣・喫煙習慣がある方、顔が赤くなりやすい体質の方、以前に食道・咽頭・胃のがんを指摘されたことがある方は、定期的な胃カメラ検査を受けることを特におすすめします。症状がなくても年に1回程度の検査が早期発見につながります。
食道がんの診断は、複数の検査を組み合わせて総合的に行われます。
胃カメラ検査・生検
食道がんの診断において最も重要な検査です。食道粘膜を直接観察し、疑わしい病変があれば組織を採取して病理検査(生検)を行い、がん細胞の有無を確認します。前述のNBIやヨード染色を用いることで早期病変の検出精度が高まります。
CT検査
がんの壁外への浸潤(深さ)・リンパ節への転移・肺・肝臓など他臓器への遠隔転移の有無を評価するために行います。治療方針の決定に欠かせない検査です。
超音波内視鏡検査
(EUS)
胃カメラにエコー(超音波)装置を組み合わせた検査で、がんの食道壁への浸潤の深さや周囲リンパ節の状態をより詳しく評価するために行われます。
PET-CT検査
全身の転移の有無を調べるために行われることがあります。特に手術や放射線治療を検討する際の病期評価に有用です。
血液検査・腫瘍マーカー
SCC抗原・CEA・P53抗体などの腫瘍マーカーを測定します。がんの診断補助・治療効果の判定・再発の確認などに用いられます。
食道がんの治療は、がんの進行度(ステージ)・部位・患者さんの全身状態などを総合的に考慮して決定されます。
がんが食道粘膜内または粘膜下層の浅い部分にとどまる早期がんでは、胃カメラ検査を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)が選択されます。開腹・開胸手術を行わずにがんを切除できるため、体への負担が少なく、術後の回復も比較的早いことが期待されます。
進行がんや、内視鏡的切除では対応が難しい病変に対しては外科的手術が基本となります。食道の一部または全体を切除し、胃や腸を用いて食道を再建します。近年は腹腔鏡・胸腔鏡を用いた低侵襲手術も行われるようになっています。
抗がん剤(化学療法)と放射線療法を組み合わせた治療法です。手術が難しい場合や、手術前後の補助療法として行われます。食道を残せる可能性があるため、根治を目指しながらも機能の温存を図る場合に選択されることがあります。
転移・再発した場合や切除不能の進行がんでは、抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた薬物療法が行われます。近年は新たな薬剤の開発も進んでいます。
以下に当てはまる症状や状況がある方は、お気軽にご相談ください。
食道がんは早期発見・早期治療が予後の改善に直結する疾患です。「症状がないから大丈夫」と考えずに、定期的な胃カメラ検査による確認をおすすめします。少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご来院ください。
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