胃がん
胃がん
胃がんとは、胃の内側を覆う粘膜の細胞が何らかの原因で異常増殖し、悪性腫瘍となった状態をいいます。日本人に多いがんのひとつであり、特に男性では罹患率が高いとされています。年齢別では50代以降から増加する傾向があり、早期発見・早期治療が予後を大きく左右する疾患です。
胃がんの多くは、胃の粘膜の最も内側(粘膜層)から発生します。早期の段階では粘膜内またはその直下にとどまっており、この時期に発見・治療できれば良好な経過が期待できます。一方、進行するにつれて胃の壁の深部へと広がり、やがてリンパ節や肝臓・肺などほかの臓器へ転移するリスクが高まります。転移が生じると治療の選択肢が限られるため、進行する前に発見することが非常に重要です。
胃がんは早期にはほとんど自覚症状がなく、「症状がないから大丈夫」と油断しがちな疾患です。だからこそ、定期的な検診や胃カメラ検査による早期発見への取り組みが大切です。
胃がんは早期の段階では目立った症状が現れないことがほとんどです。そのため、症状が出てから受診した時点では、すでにある程度進行しているケースも少なくありません。以下のような症状が続く場合には注意が必要です。
みぞおちや上腹部の
不快感・鈍い痛み
胃炎や胃潰瘍と似た症状として現れることがあります。繰り返す痛みや違和感が続く場合は受診をおすすめします。
胃もたれ・
食欲不振
少量の食事でも満腹感を感じたり、食欲が続けて落ちたりする場合は要注意です。
体重減少
明らかな原因がないにもかかわらず体重が減り続けている場合は、消化器系の疾患が隠れている可能性があります。
吐き気・嘔吐
腫瘍が大きくなることで消化管の通過が妨げられ、食後に吐き気や嘔吐が生じることがあります。
黒色便(タール便)
・吐血
腫瘍から出血が起きると、便が黒くなったり血を吐いたりすることがあります。このような症状があれば速やかに受診してください。
貧血・全身倦怠感
慢性的な出血が続くことで貧血が生じ、疲れやすさやふらつきとして現れることがあります。
これらの症状は胃がん以外の疾患でも起こりますが、気になる症状が2週間以上続く場合はためらわずにご相談ください。早期発見のためには、症状がない段階から定期的な検査を受けることが最も重要です。
胃がんの発症には複数のリスク要因が関係しているとされています。自分のリスクを知ることが、早期発見・予防への第一歩です。
胃がんの最大のリスク要因としてはピロリ菌感染です。ピロリ菌は胃の粘膜に住みつき、慢性的な炎症(慢性胃炎)を引き起こします。この炎症が長年にわたって続くことで、萎縮性胃炎(粘膜が薄くなった状態)から腸上皮化生(胃の粘膜が腸の粘膜に似た状態へ変化すること)へと進行し、がん化リスクが高まるとされています。ピロリ菌感染者は非感染者と比べて胃がんになりやすいと報告されており、除菌治療によってリスクを低下させることが期待できます。除菌後も定期的な胃カメラ検査による経過観察を続けることが大切です。
塩分の多い食事
塩蔵食品(塩辛・漬物・加工肉など)の過剰摂取は胃粘膜への刺激となり、発症リスクを高めるとされています。
喫煙
たばこに含まれる有害物質は胃がんのリスク要因のひとつとされており、禁煙が予防につながる可能性があります。
過度の飲酒
胃粘膜へのダメージが積み重なることでリスクが高まる可能性があります。
野菜・果物の
摂取不足
抗酸化物質の不足がリスクに関与するとされています。バランスのよい食事を心がけることが大切です。
歯周病など
ピロリ菌に感染していない方の胃がんも少しずつ増えてきています。遺伝的な体質や生活習慣の複合的な関与がありますが、手術後のがんの病理検査を調べると歯周病菌ががん細胞に多量に感染していたという報告もあります。胃がんのみならず病気の予防のためにもオーラルヘルスはとても大切です。
家族歴
血縁者(特に親・兄弟姉妹)に胃がんの方がいる場合、リスクが高まる可能性があります。
萎縮性胃炎・
腸上皮化生の既往
これらの病変がある場合は定期的な経過観察が特に重要です。
加齢
50代以降から罹患率が上昇する傾向があり、年齢もリスク要因のひとつです。
胃がんの早期発見において、胃カメラ検査は非常に重要な役割を果たします。バリウムを使ったX線検査と比べ、胃カメラ検査では胃の粘膜を直接・詳細に観察できるため、ごく小さな病変や色調のわずかな変化も捉えることが可能であり、早期がんの発見に優れています。また、胃カメラ検査では疑わしい病変が見つかった際に、その場で組織の一部を採取して病理検査(生検)を行うことができます。これにより、がんかどうかの確定診断が可能です。X線検査で「異常なし」となった場合でも、粘膜の微細な変化は胃カメラ検査でなければ確認できないことがあります。
さらに、胃カメラ検査と同時にピロリ菌感染の有無を調べることもでき、感染が確認された場合はすぐに除菌治療へとつなぐことができます。胃がんは早期発見であれば、胃カメラ検査を用いた体への負担が少ない内視鏡治療で対応できるケースもあります。症状がない方でも、40歳以降は定期的な胃カメラ検査を受けていただくことをおすすめします。特にピロリ菌感染歴がある方・萎縮性胃炎と診断されたことがある方・家族に胃がんの方がいる方は、より積極的・定期的な胃カメラ検査をおすすめします。
胃がんが疑われる場合、以下の検査が行われます。
胃カメラ検査・生検
確定診断の最も重要な手段です。口または鼻からスコープを挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察します。病変が疑われる部位から組織を採取(生検)し、顕微鏡でがん細胞の有無を病理検査によって確認します。
ピロリ菌検査
胃カメラ検査時の組織検査(迅速ウレアーゼ試験)のほか、尿素呼気試験・血液検査・便中抗原検査などでピロリ菌の感染を調べます。感染が確認された場合は除菌治療を行います。
CT検査・
MRI検査
がんが胃の壁のどこまで深く広がっているか(深達度)、またリンパ節や他臓器への転移の有無を調べるために行います。胃がんと診断された後の病期(ステージ)診断に欠かせない検査です。
超音波内視鏡検査
(EUS)
胃カメラ検査の先端に超音波装置を組み合わせたもので、腫瘍の深さやリンパ節への転移の状況をより詳しく評価できます。内視鏡治療の適応を判断する際などに用いられることがあります。
PET検査
放射線を利用してがん細胞の活動状況を全身的に画像化する検査です。特殊な胃がんやリンパ節転移の有無や治療効果の確認などに用いられることがあります。
胃がんの治療方針は、がんの進行度(病期)・深達度・患者さんの全身状態などを総合的に判断したうえで決定されます。
がんが粘膜内またはその直下にとどまっており、リンパ節転移のリスクがないと判断される早期がんに適応されます。胃カメラ検査を用いてがん病変を切除するため、胃を温存でき、体への負担も比較的少ない治療法です。代表的な方法として内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。入院治療や専門医療機関での治療が必要となり紹介をさせていただきます。早期胃がんの場所や広がりによっては治療に難渋したり、時間を要することがあり、事前にそのような可能性があると判断した場合は提携医や医療機関に紹介を行うことが可能です。切除した組織は病理検査で詳しく調べられ、追加治療が必要かどうかが判断されます。
がんが粘膜より深く浸潤している場合や、リンパ節転移が疑われる場合には外科手術が選択されます。胃の一部または全部を切除するとともに、周囲のリンパ節も郭清(取り除くこと)します。近年は腹腔鏡手術やロボット支援手術など、体への負担を軽減した手術方法も普及しており、術後の回復が早くなっています。こちらもロボット支援手術などに対応可能な連携医療機関に紹介をさせていただきます。
手術が難しい進行・再発胃がんに対しては、抗がん薬による化学療法が行われます。また、がんの性質(HER2陽性かどうかなど)に応じて分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬が使用されるケースもあります。近年は薬物療法の選択肢が広がっており、個々の患者さんの状態に合わせた治療が進んでいます。治療関連の副作用もみられることがあり、専門医療機関とかかりつけ医による情報共有により患者さんへの支援がとても大切です。
胃がんに対する放射線療法は、痛みなどの症状緩和を目的として用いられることがあります。他の治療法と組み合わせて行われる場合もあります。
以下に当てはまる方は、早めに受診されることをおすすめします。
胃がんは早期に発見できれば、治療の選択肢が広がり、良好な経過が期待できます。「症状がないから大丈夫」と思わず、定期的な胃カメラ検査で早期発見・早期治療を心がけることが大切です。またピロリ菌に感染していなくても、若い世代だからといって問題ないとは言えない時代になっています。繰り返しになりますが日頃からの定期検査や歯科検診によるオーラルヘルスの維持もとても大切です。少しでも気になる症状や不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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